相田 潤

相田 潤 あいだ じゅん

東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 歯科公衆衛生学分野 教授

担当カテゴリ: 歯・口腔の健康

2003年北海道大学歯学部卒業、04年国立保健医療科学院専門課程修了、07年北海道大学大学院歯学研究科博士課程修了。07年東北大学大学院歯学研究科助教、10年University College London客員研究員、11年東北大学大学院歯学研究科准教授、12年~19年宮城県保健福祉部参与(歯科医療保健政策担当)兼務、14年東北大学大学院歯学研究科臨床疫学統計支援室室長兼任、20年~21年東北大学大学院歯学研究科歯学イノベーションリエゾンセンター地域展開部門教授(クロスアポイントメント)、20年より現職。専門分野は公衆衛生学と社会疫学。現在、歯科疾患の健康格差、口腔と全身の健康の研究、ソーシャル・キャピタルや東日本大震災の健康影響などの研究に従事。

水道水フロリデーション

水道水フロリデーションとは、むし歯を予防するために、飲料水中のフッ化物濃度をむし歯の発生を大きく抑制する適正量(約1ppm)まで調整するという方法です。むし歯有病状況を半分程度にするという効果があり、歯科受診やフッ化物配合歯磨剤の利用が難しい人等にも、自然に健康になれる環境を実現できる可能性がある方法です。もともとフッ化物は自然の状態で飲料水に微量に含まれており、その濃度によってはむし歯予防効果があることが100年ほど前に発見されました。80年以上の実施の歴史と研究から、安全性と効果について繰り返し専門機関が保証しています。緑茶や紅茶にもフッ化物が含まれますが、その濃度は水道水フロリデーションと同じくらいであり、身近な食品に近い濃度のフッ化物でむし歯を予防する方法として知られています。

ライフステージ別にみたむし歯の特徴

「むし歯は減った」といわれますが、実は他の病気に比べると極めて多い疾患です。令和6年学校保健統計調査において近視に次いで、むし歯は多く[1]、永久歯に治療が必要なむし歯を有する人は28%(令和6年歯科疾患実態調査)[2]と極めて多い状況です。40歳以上の年齢において約4割は、むし歯が原因で抜歯の経験があります。高齢者でも、むし歯を有する人が増加しています[3]。むし歯の多くは、歯ブラシの届きにくい奥歯の溝や歯と歯の間から発生します。大人では、歯の詰め物の下で再発したむし歯や歯の根面のむし歯も多くなります。初期のむし歯はフッ化物の利用に加えて、適切なプラークコントロール等により回復することがあります。しかし、進行すると歯を削ったり、歯の神経(歯髄)を取り去るような大きな治療が必要になります。

むし歯の特徴・原因・進行

むし歯は世界で最も多い疾患として知られており[1]、未治療のむし歯は日本でも多くの人に存在します。さらに近年は高齢者において、むし歯は増加しています[2]。むし歯は細菌が糖質をもとに作り出す酸が歯を溶かすことで生じます。唾液は酸を中性に近づけたり、溶けかけた歯を修復する役割を持ちます。多くのむし歯は歯の間や奥歯の溝から発生し、特に溝の細菌は歯磨きでは取り除けません。そのため歯磨きをしていればむし歯が防げるという常識は現在では正しくないことが分かっています。さらに生物医学的原因だけでなく、社会環境・生活環境の重要性が認識されつつあります。



開示すべきCOIはありません。