睡眠と健康

不眠症

不眠症とは、入眠障害(寝つきが悪い)・中途覚醒(眠りが浅く途中で何度も目が覚める)・早朝覚醒(早朝に目覚めて二度寝ができない)などの睡眠問題があり、そのために日中に倦怠感・意欲低下・集中力低下・食欲低下などの不調が出現する病気です。不眠は誰でも経験しますが、自然に改善して再び眠れるようになることが大部分です。ただし、いったん慢性不眠症に陥ると適切な治療を受けないと回復しにくいといわれています。不眠の原因はストレス・こころやからだの病気・薬の副作用など様々で、原因に応じた対処が必要です。不眠が続くと不眠恐怖が生じ、緊張や睡眠状態へのこだわりのために、なおさら不眠が悪化するという悪循環に陥ります。家庭での不眠対処で効果が出ないときは専門医に相談しましょう。睡眠薬に対する過度の心配はいりません。現在使われている睡眠薬は適切に使用すれば安全です。

昼間の眠気 – 睡眠不足だけではなく睡眠・覚醒障害にも注意が必要

令和元年に、全国から無作為に抽出した20歳以上の成人約5,700人を対象に厚生労働省が実施した国民健康・栄養調査によれば、「この1ヵ月間に、週3回以上、日中に眠気を感じた」人は、34.8%もいました。20代が43.6%ともっとも多く、年齢が高くなるにつれて眠気を感じる人は減少しましたが、70歳以上の年代でも31.1%が眠気を感じていました。眠気の原因は睡眠不足だけではありません。睡眠の質が低下する睡眠障害、持病のために服用している薬剤の副作用、うつ病などの精神疾患などでも眠気が出現することがあります。生活スタイルを見直すとともに、眠気が強い場合には診察や検査を受けて必要な治療を受けることが大切です。

女性の睡眠障害

女性ホルモンは日中の眠気や睡眠に影響を及ぼすため、「月経(生理)」「妊娠・出産」「閉経(更年期)」などの女性ホルモンが大きく変動するライフイベントでさまざまな睡眠問題が生じることがあります。例えば、生理前の強い眠気、妊娠中の眠気や不眠、更年期の不眠などがあります。女性のライフステージに沿って解説します。

概日リズム睡眠・覚醒障害

概日リズムとは、睡眠や体温、血圧、心拍、多くのホルモン分泌、免疫機能、代謝など、私たちの大部分の生体機能を司る約24時間周期のリズムのことです。しかし、概日リズムを生み出す体内時計の周期があまりにも長かったり、何らかの原因で体内時計の機能が障害されたり、光による時刻調整がうまくできなったりすると、睡眠リズムが大きく乱れてしまいます。このような、睡眠リズムの異常が生じるタイプの睡眠障害が「概日リズム睡眠・覚醒障害」です。

こどもの睡眠

小児の睡眠不足や睡眠障害が持続すると、肥満や生活習慣病(糖尿病・高血圧)、うつ病などの発症率を高めたり症状を増悪させたりする危険性があります。適切に対処していくには「早起き・早寝」という基本的な生活習慣から見直すことが必要です。

睡眠と生活習慣病との深い関係

長時間労働や夜型生活による短時間睡眠(睡眠不足)、交替勤務(シフトワーク)による不規則な睡眠リズム、不眠症や閉塞性睡眠時無呼吸などの睡眠障害は生活習慣病の罹患リスクを高め、かつ症状を悪化させることが分かっています。本稿では、睡眠不足や交替勤務などの睡眠習慣の問題、睡眠障害については閉塞性睡眠時無呼吸と不眠症の問題を取り上げ、それぞれ生活習慣病との関係について解説します。



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