糖尿病の発症予防
糖尿病予備群や血糖正常高値の方を対象とした、生活習慣の改善を促す健康づくり支援ツール
糖尿病の発症を予防するためには生活習慣の見直しが必要ですが、対象者が肥満か否かにより、減量の必要性が異なります。
対象者の状態に合わせた適切な支援を行うため、エビデンスに基づいた解説書をご用意しています。
ツール監修者一覧(50音順)

- 津下 一代
- 女子栄養大学 栄養学部 教授
- 略歴:
1983年 名古屋大学医学部医学科 卒業
1983年 国立名古屋病院研修医、1985年内科レジデント
1987年 国立名古屋病院内科医員、名古屋大学研究生
1990年 名古屋大学第一内科(内分泌・代謝)医員
1992年 医学博士取得(名古屋大学)
1992年 愛知県総合保健センター 診断第一室医長、1999年臨床検査部長
2000年 あいち健康の森健康科学総合センター 2011年センター長
2020年 女子栄養大学 特任教授
2025年 女子栄養大学 教授 (現在に至る) - 社会活動:
厚生労働審議会 健康日本21(第二・三次)策定・推進専門委員会 委員
社会保障審議会介護保険部会 構成員
保険者による健診・保健指導の在り方に関する検討会 座長
経済産業省 健康・医療新産業協議会および健康経営推進検討会 構成員
スポーツ庁 スポーツ審議会健康スポーツ部会 委員
日本健康会議実行委員、健康・体力づくり事業財団 理事
監修ツール
- 糖尿病になる前に いつまでも健康に過ごすために今日からスタート
- 糖尿病になる前に いつまでも健康に過ごすために今日からスタート 解説書

- 綿田 裕孝
- 順天堂大学 大学院 医学研究科 代謝内分泌内科学 教授
- 略歴:
1990年 大阪大学 医学部 卒業
1997年 大阪大学 大学院 医学研究科 修了
1997年~2000年 カリフォルニア大学 サンフランシスコ校 ホルモン研究所 研究員
2001年~ 順天堂大学 医学部 内科学 代謝内分泌学講座 講師
2006年~ 順天堂大学 医学部 内科学 代謝内分泌学講座 助教授
2010年~ 順天堂大学 大学院 医学研究科 代謝内分泌内科学 教授
監修ツール
- 糖尿病になる前に いつまでも健康に過ごすために今日からスタート
- 糖尿病になる前に いつまでも健康に過ごすために今日からスタート 解説書
課題の背景にあるエビデンスの情報
糖尿病予備群に対する糖尿病予防介入に関するエビデンスまとめ
- 糖尿病の予防のため食生活改善+身体活動促進(ライフスタイル改善)介入が行われている
- 糖尿病予備群に対する糖尿病予防の介入研究についてシステマティックレビュー(含むメタアナリシス)をレビューしたところ、ライフスタイル改善として、食生活改善か身体活動促進、あるいは両者の組み合わせが行われていた。食生活か身体活動単独よりも、食生活+身体活動を組み合わせるほうが糖尿病発症リスクを減少させる効果がある。
-
- プライマリケアにおける糖尿病予備群への介入効果を検討したシステマティックレビューでは、包含した研究10件のうち7件で食生活及び身体活動への助言を含む教育プログラムが行われており、具体的にはカロリー制限や低脂肪食、高繊維食、個別カウンセリングやグループディスカッション、身体活動についてのカウンセリング、レジスタンス運動のサーキットトレーニング、またプログラムを遂行できるよう支援するフォローアップを、研究によって様々な組み合わせで行っていた。1年後のフォローアップで対照群と比較して、ブドウ糖負荷試験(2時間後血糖値)が有意に減少し、また糖尿病発症のリスクが有意に50%減少した(1)。
- 耐糖能異常におけるライフスタイル改善の効果を検討したメタアナリシスでは、包含された7件のRCTで食生活と身体活動を組み合わせた介入を行っていた。食生活改善の内容は様々であるが、脂質の削減と食物繊維の増加が最も頻繁に用いられていた。身体活動は主にウォーキングであった。7件の結果を統合したメタアナリシスによると、糖尿病発症リスクを介入群と対照群で比較したところ、介入群で有意に低減した(2)。
- 耐糖能異常に対する身体活動の効果を検討したシステマティックレビューでは、身体活動単体での効果は明確には言えないという結論であった。しかし、包含した8件の比較研究における介入内容は、体重減少を目標とした運動及び食生活改善の複合的な生活改善プログラムで、8試験のうち糖尿病発症率をアウトカムとした4試験は、対照群に比べて低い傾向となった。(3)。
- 介入の長期効果について検討したメタアナリシスでは、食生活及び身体活動の効果を検討しており、平均2.6年の介入期間で、対照群と比較して介入群の糖尿病発症リスクは有意に39%減少した。介入内容ごとに層別化した解析では、食生活改善のみでも有意に32%減少、食生活カウンセリングと食事計画のみでも有意に減少した。身体活動のみでは有意な減少は見られなかったが、身体活動と食生活改善を組み合わせた介入では有意に41%減少した(4)。
- 食生活、身体活動、あるいは両方を用いた介入による糖尿病あるいは合併症の発症遅延効果を検討したコクランレビューでは、著者らは結論として、食生活または身体活動単独による効果を示す強いエビデンスを得ることはできなかったが、食生活+身体活動については耐糖能異常における糖尿病発症やリスクを低減する、と述べている(5)。
- 専門家主導のプログラムが有効である
- 介入プログラムの提供者は、訓練を受けた一般人(例:コミュニティメンバーなど)よりも専門家のほうが有効である。
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- 世界各地で行われた糖尿病予防介入の結果を検討したメタアナリシスでは、提供者や提供方法により、(a)コミュニティメンバーによるグループ教育、(b)保健専門職によるグループ教育、(c)保健専門職による個別カウンセリング、(d)デジタルで提供される教育またはカウンセリングに分けることができた。非比較研究も含めて14件の介入を内容別に層別化してメタアナリシスを行ったところ、(b)の保健専門職によるグループ教育のみ対照群と比較して有意に糖尿病発症リスクが低かった。なお、介入群全体の血糖指標について空腹時血糖のみが対照群と比較して有意に改善した(6)。
- 食生活+身体活動プログラムによる体重や血糖指標の改善効果を検証したメタアナリシスでは、多くの介入プログラムにおいてカウンセラーを設置しており、その職種は栄養士、身体活動指導士、看護師、訓練を受けた素人という順に多かった。著者らは栄養士による個別カウンセリングは血糖指標をより改善する傾向があると考察で述べていた(7)。
- 改善した食生活と身体活動を維持することが重要
- 介入により改善したライフスタイルをいかに維持するかが重要であり、長期間介入はライフスタイル改善が定着しやすく、効果が持続するという見解は研究間で一貫している。
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- 耐糖能異常に対する薬を用いない介入の効果検証を行ったシステマティックレビューでは、介入の内容は強度の高いライフスタイル改善(身体活動及び食生活)であった。研究の内容が異なるためメタアナリシスは行われなかったが、全ての研究で介入群において糖尿病が進行した参加者は有意に少なく、また耐糖能を測定した研究全てにおいて正常域に戻った者が多かった。しかし効果は短期間だった。著者らは、参加者が強度の高い介入プログラムを忠実に遂行し、かつ長期間(4年以上)実施することで改善したライフスタイルが定着するのではないかと考察している(8)。
- 介入の長期効果について検討したメタアナリシスでは、食生活及び身体活動の効果を検討した結果を報告している。これによると、統合した結果では、平均2.6年の介入期間で対照群と比較して介入群の糖尿病発症リスクは有意に39%減少した。介入終了後の追跡期間では、ライフスタイル改善介入は28%のリスク減少であった。著者らは、ライフスタイル改善介入は糖尿病リスクを低減するが、その効果は時間によって減少していくため、行動変容を維持する戦略が必要だろうと考察している(4)。
- 自宅の近くだと介入への参加意欲を維持しやすい
- 介入は自宅の近くで実施すると、時間や移動のコストがかからないため参加意欲を維持しやすい。オンラインでの提供は対面よりも効果が低い傾向にあるが(9)、対面での介入を基本として柔軟に導入することで、参加を促す可能性がある。また地域のコミュニティ内で実施することで参加者はソーシャルサポートを受けやすく、文化的背景にも配慮した介入プログラムを組みやすい。
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- 南アジア系人種に対するライフスタイル改善介入の効果を検討したメタアナリシスで、介入実施場所ごとに結果を比較したところ、地域のコミュニティにある施設で実施した介入のほうが、その他の場所よりも体重およびBMIで有意な減少が見られた(10)。
- アメリカ国内のヒスパニック系住民における糖尿病予防介入について検討したシステマティックレビューでは、ヒスパニック系の文化的背景に配慮したプログラム(スペイン語を用いて、コミュニティの中で、ピア教育者やコミュニティで働く保健専門職により、ヒスパニック系の食材やレシピを用いて、コミュニティ活動にプログラムを組み込むというような内容)が参加者の自宅近くで行われていた。アウトカムを体重減少とした9件、HbA1cとした2件で、いずれも有意に改善した(11)。
- ライフスタイル改善の障壁と成功要因について検討したシステマティックレビューで、コミュニティ内の施設やオンラインプラットフォーム、あるいは自然環境での身体活動介入は参加者に受け容れやすかった。ある屋外プログラムでは参加者の83%が屋外での実施が参加の決め手になったと話している。また77%の参加者が自宅の近くで実施されることは参加への強い動機付けになると話していた(12)。
- 目標設定とグループ介入が有効である(日本人を対象とした研究)
- 必要な知識を習得したうえで目標設定し、セルフモニタリングを続けることは食生活や身体活動の改善につながりやすい。また介入をグループで実施することも有効である。
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- 生活改善の効果を検討したRCT(ランダム化比較実験)では、介入開始前に全参加者に対し体重5%減少を目標とした総摂取エネルギー量減少、身体活動量増加を指導し、両群の参加者は自身の目標設定を行った。介入群は身体活動介入として自身の体重と歩数計の歩数、また目標にどれだけ近づいたかを記録した。希望者には運動の指導を行った。身体活動の時間を取れない者には日常生活上でできる運動(バスを目的地の1つ前で降りるなど)を指導した。また食生活介入として脂質(総エネルギー量の20~25%)と炭水化物量(総エネルギー量の55~60%)を抑えることで総摂取エネルギー量を低下させることを目指して行われた(参加者は全員BMI 24.0以上)。36カ月後の介入群における糖尿病発症ハザード比は対照群より有意に低かった(13)。
- グループによるセルフマネジメント教育の効果を検討したRCTでは、介入群では6カ月間、3時間の健康教室を8回、8~10人のグループで受講した。3時間のうち1時間は専門家による講義で、その後2時間はグループワークを行った。参加者はグループの中で必ず発言する機会を与えられた。また、血糖値を食前と2時間後に毎食後測定し、体重測定結果と共に毎日記録を付けるよう奨励された。目標設定に関しては、体重を5%減少するよう目標を立て、グラフで自身の変化を確認した。食事記録や身体活動についても記録を行った。目標は初回で立て、毎回達成状況をグループで報告した。このカリキュラムは、セルフマネジメントに必要な知識・技術・態度を身に付けることで、生活習慣を長期化することを目指している。6カ月後、介入群におけるHbA1c、空腹時血糖、体重、BMIは対照群よりも有意に減少していた(14)。
エビデンスのまとめに関する手法最終更新日:2025年6月
これは、PubMed および Web of Science のデータベースを使用して、当該分野の介入のエビデンス(主にシステマティックレビューやメタアナリシス)を収集し、文献調査を行った結果をまとめたものです。検索式の設定に関しては、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)のエビデンス一覧等を基に作成しました。
参考文献リスト
| No. | 著者 | 文献名 | 発表年 |
|---|---|---|---|
| 1. | Lauritzen T, et al. | Is prevention of Type-2 diabetes feasible anfficient in primary care? A systematic PubMed review. Prim Care Diabetes. 2007 Feb;1(1):5-11. | 2007 |
| 2. | Uusitupa M, et al. | Prevention of Type 2 Diabetes by Lifestyle Changes: A Systematic Review and Meta-Analysis. Nutrients. 2019 Nov 1;11(11):2611. | 2019 |
| 3. | Yates T, et al. | The role of physical activity in the management of impaired glucose tolerance: a systematic review. Diabetologia. 2007 Jun;50(6):1116-26. | 2007 |
| 4. | Haw JS, et al. | Long-term Sustainability of Diabetes Prevention Approaches: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Clinical Trials. JAMA Intern Med. 2017 Dec 1;177(12):1808-1817. | 2017 |
| 5. | Hemmingsen B, et al. | Diet, physical activity or both for prevention or delay of type 2 diabetes mellitus and its associated complications in people at increased risk of developing type 2 diabetes mellitus. Cochrane Database Syst Rev. 2017 Dec 4;12(12):CD003054. | 2017 |
| 6. | Galaviz KI, et al. | Global Diabetes Prevention Interventions: A Systematic Review and Network Meta-analysis of the Real-World Impact on Incidence, Weight, and Glucose. Diabetes Care. 2018 Jul;41(7):1526-1534. | 2018 |
| 7. | Balk EM, et al. | Combined Diet and Physical Activity Promotion Programs to Prevent Type 2 Diabetes Among Persons at Increased Risk: A Systematic Review for the Community Preventive Services Task Force. Ann Intern Med. 2015 Sep 15;163(6):437-51. | 2015 |
| 8. | Gillett M, et al. | Non-pharmacological interventions to reduce the risk of diabetes in people with impaired glucose regulation: a systematic review and economic evaluation. Health Technol Assess. 2012 Aug;16(33):1-236, iii-iv. | 2012 |
| 9. | Smith EA, et al. | The effectiveness of delivery modalities of non-pharmacological diabetes prevention programs: A systematic review and component network meta-analysis. Diabetes Metab Syndr. 2024 Oct 10;18(10):103136. | 2024 |
| 10. | Farhat G, et al. | Effectiveness of lifestyle interventions/culturally bespoke programmes in South Asian ethnic groups targeting weight loss for prevention and/or remission of type 2 diabetes: a systematic review and meta-analysis of intervention trials. J Hum Nutr Diet. 2024 Apr;37(2):550-563. | 2024 |
| 11. | McCurley JL, et al. | Diabetes Prevention in U.S. Hispanic Adults: A Systematic Review of Culturally Tailored Interventions. Am J Prev Med. 2017 Apr;52(4):519-529. | 2017 |
| 12. | McMullen B, et al. | A systematic review of the mechanisms influencing engagement in diabetes prevention programmes for people with pre-diabetes. Diabet Med. 2024 Aug;41(8):e15323. | 2024 |
| 13. | Saito T, et al. | Lifestyle modification and prevention of type 2 diabetes in overweight Japanese with impaired fasting glucose levels: a randomized controlled trial. Arch Intern Med. 2011 Aug 8;171(15):1352-60. | 2011 |
| 14. | Imai S, et al. | Randomized Controlled Trial of Two Forms of Self-Management Group Education in Japanese People with Impaired Glucose Tolerance. J Clin Biochem Nutr. 2008; 43(2): 82-87. | 2008 |









