近視とは、眼に入った平行光線が、網膜より手前で焦点を結ぶ状態です。近視の多くは、こどもの頃に、眼球の前後方向の長さを表す
こどもたちを取りまく生活環境の変化によって、世界的に近視人口は増加傾向にあります。裸眼視力1.0未満のこどもの全てが近視であるとは限りませんが、そのうち、約8~9割は近視であることが指摘されています。日本では学童近視の有病率は不明ですが、裸眼視力低下の推移から、近視は約40年前から増加し続けていると推察されております(図1)。このため、2021年度から児童・生徒の近視実態調査事業が文部科学省主導で開始され、全国約9千人の児童・生徒を対象に、
近視の発症には、長時間の
①屋外活動の確保
屋外活動は、近視の発症を予防することが科学的に証明されています。効果的な成果を得るためには、1日2時間の屋外時間を確保することが望ましいです。屋外活動は、年齢が低い幼児や小児ほど重要な対策です。例えば、休み時間はなるべく外に出る、屋外のスポーツに親しむなど、短時間の屋外時間の組み合わせでも問題ありません。2020年の新型コロナウイルス感染症に対する自粛政策を契機に、屋外時間は大幅に減少しています。意識的にベランダや庭で過ごすことや、公園に散歩に出かけるなどの工夫が必要です。
近視予防に有効と考えられる屋外照度は、暗そうに見える木陰や建物の影、曇りの日に得られる程度の明るさ(1千~3千ルクス以上)でも十分です。こどもたちに小型の照度計をつけさせ、実際の数値を確認することで、具体的な目標がわかり、モチベーションにもつながります。夏の天気が良い日は、帽子やサングラスを使用しても、目の周りには近視予防に十分な光は確保できます。熱中症や紫外線対策を十分に行って、安全に屋外活動を実施しましょう。
②近業の管理
保育や学校現場に十分な屋外活動時間を確保する対策を国家規模で行うことで、近視の低年齢発症を阻止することに成功してきた海外の国々においても、ここ数年間、近視が増加しており、その原因は、過度な
従来の紙やペンであろうが、電子機器を用いた近業であろうが、近業を行うときは、30cm以上離してものを見ること、30分以上連続して近くを見続けないことが重要です。学校の授業では、黒板を見ることが多いため、あまり問題がありません。また学校の授業がICT機器を用いた授業に変わっていたとしても、手元のスクリーンばかりを見続けることにならないよう、配慮がなされています。しかし自宅や塾での
③スクリーンタイム(電子機器の画面を見る時間)
スマートフォンなどの携帯小型機器を使用した場合、視距離は20cm未満まで近くなります。20cmを切るような
日本眼科医会が、こども向けの啓発マンガのポスターやリーフレットを制作しています(図2)。これらから、こどもたち自身が眼を守る使い方、環境の改善方法を学ぶことが重要です。
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(最終更新日:2024年12月19日)