◆中小企業等における健康支援
担当者が男女の違いをしっかりと認識し
「知る」「不調時の相談」「環境整備」の3フェーズで取組を
職場における健康づくりが中小企業にも広まりつつある中、女性の健康づくりにどう取り組んでいけばよいのでしょうか。中小企業の健康づくりに詳しい「月刊総務」編集長の豊田健一氏に聞きました。

編集長 豊田 健一氏
- 中小企業にとって、経営者・従業員(主に女性)の健康づくりが重要なのはなぜでしょうか。
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働き方改革、生産性向上を目指す上で、従業員個々人の生産性を向上する必要があります。人の生産性向上において、その人の健康状態が悪い状態では満足に仕事ができるわけがありません。会社が仕事をするわけでもなく、組織が仕事をするわけでもなく、結局は個々の人の仕事の集積が組織や会社の業績となります。
大企業とは異なり、中小企業は個々人の担う役割が大きく、少ない人数で会社を支えています。そのため、一人でも欠けると大きな影響があります。従って、中小企業では個々人の健康がなによりも大事となってくるわけです。
- 中小企業の健康づくり担当者が女性を対象とした健康維持・増進施策を企画・実施していくときに、どのような困りごと・悩みに直面することが多いのでしょうか。
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誰が担当者となるか、これがポイントです。
男性が多い企業においてはなおさら、ここが課題となります。つまり、男女の違いや、対象となる女性のことを深く理解していないと、的を射た施策が立案できないという事態に陥ります。
例えば、社内の介護離職防止担当者に若い人事担当者を配置しても、経験をしていないので、その立場になって親身に対応することは難しいでしょう。これと同じように、企画・実施する以前の問題として、女性を対象とするなら女性を担当者とする、あるいは、女性のアドバイスを受けられる状況にすることが大事です。
- 中小企業の健康づくり担当者が、具体的な対策・施策を考える際にどのようなことを意識するべきでしょうか。
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3つのフェーズで考えると良いでしょう。
まずは「知る」という施策の導入です。男性はもとより、女性自身も対象に知る機会をつくることで理解を深めていきます。次は、不調時に相談ができる体制づくりをすること。最後は環境の整備で、健康状態に合わせた柔軟な働き方ができる制度設計をしていくことです。
◆さまざまな企業の取組例
「知る」フェーズ
- 「女性のライフステージと健康セミナー」の開催
- 「女性と健康」セミナー:「女性のライフステージ」「月経について」「栄養について」「乳がん、子宮がん検診について」の開催
- 「健康フェア」:「乳がん啓発コーナー」を設置。男性も模型を触ったり、しこりがどういうものかを体験。女性には専門的な「女性のための乳がんセミナー」を開催
「不調時に相談ができる」フェーズ
- 「女性の健康に関する相談窓口」の設置
- 「健康増進センター」、「健康管理室」の設置
- 「女性に特化した専門の健康相談窓口」の設置
「環境整備」フェーズ
- 女性がそれぞれの健康状態に合わせた柔軟な働き方ができる体制づくり
- テレワーク制度により、体調が思わしくない場合は在宅勤務ができる
- 30分単位で有給休暇が取れ、短時間有給により通院したり、療養できる
- コアタイムのないフレックスタイム制度により、無理にコアタイムに出勤せず体調にあわせて出社する
- 高度な不妊治療を受診の際は、一定期間の休職を認める
- 産前産後の休暇制度、産前は従業員の希望によって取得でき、「産後は 10 週まで休暇取得が可能」といった制度