座位行動が多いことは、総死亡や心血管疾患による死亡のリスクを高めることが多くの研究で示されています。本記事では、座位行動と死亡率に関する最新の研究成果と、リスクを軽減するための身体活動の目安について解説します。
座位行動と死亡率の関係について数多くの観察研究 (前向きコホート研究) の成果が報告されるようになり、2010年代の終わり頃から、これまでの研究成果をまとめたシステマティックレビュー(関連する研究を網羅的に集めて評価する手法)・メタアナリシス(複数の研究結果を統計的に統合した分析)が盛んに行われるようになりました。
座位行動(総座位時間、テレビ視聴に伴う座位時間)と総死亡率、心血管疾患による死亡率などとの関連について検討した34編の研究データを統合し、メタアナリシスによって、量反応関係(座位時間が長くなるほどリスクも高くなる関係)の有無を検討した報告があります[1]。座位行動の評価は自己報告によるものが大半でしたが、総座位時間およびテレビ視聴に伴う座位時間と死亡率の間には多くの場合、非線形の量反応関係があることが明らかになりました。総座位時間が1日6~8時間、またはテレビ視聴に伴う座位時間が3~4時間を超える人は、それら未満の人と比較して、総死亡および心血管疾患による死亡リスクが高いことが示されています【図】。

近年は、加速度計により客観的に評価した座位行動と総死亡率の関連について検討した研究のまとめも報告されています。その1つであるLiewら[2]のシステマティックレビューでは、29編の研究から16編のデータを統合したメタアナリシスを行っています。その結果、総座位時間が最も長い群と最も短い群を比較した場合、心血管疾患による死亡リスクは1.89倍、総死亡リスクは1.58倍も高いことが示されています。これらの研究結果を踏まえ、厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023(以降、ガイド)」[3]では、座りっぱなしの時間が長くなりすぎないよう注意することが推奨されています。
では、身体活動をどの程度行えば、座位行動が死亡率に及ぼす影響を相殺できるのでしょうか。この点について、16編の研究データを統合したメタアナリシスがあります[4]。
中~高強度の身体活動量を25%ずつ4つのグループに分けて比較した結果、身体活動水準がきわめて高いグループ(1日あたりの身体活動時間が60~75分に相当)においてのみ、座位行動(総座位時間、テレビ視聴に伴う座位時間など)の影響が相殺されていました。他のグループではリスクを相殺できず、身体活動水準が低いほどリスクが高くなる傾向があると報告されています。
そのため、WHO(世界保健機関)の「身体活動・座位行動ガイドライン」[5]では、「長時間の座りすぎが健康に及ぼす悪影響を軽減するためには、中~高強度の身体活動を推奨レベル以上に行うことを目標にすべきである」ことを座位行動に関する推奨事項の1つとして掲げています。
日本のガイドでは、成人の場合、中~高強度の身体活動を1日60分以上行うことを推奨事項として挙げており[3]、座位行動の悪影響を相殺できる水準となっていることからも、整合性の取れた身体活動の推奨事項になっていることがわかります。
(最終更新日:2025年12月15日)