ストレッチングの効果

ストレッチングとは意図的に筋や関節を伸ばす運動です。体の柔軟性を高めるのに効果的であり、準備運動や整理運動の一要素としても活用されています。また、リラクゼーションの効果も明らかとなっています。広い場所や道具を必要とすることなく行える運動のひとつです。

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ストレッチングとは意図的に筋や関節を伸ばす運動です。かつては柔軟体操とも呼ばれていました。ヨガやピラティスもこの運動の範疇に含まれます。体の柔軟性を高めるのに効果的であり[1]、準備運動や整理運動の一要素として活用されています[2]

柔軟性は体の柔らかさを表す体力の一要素で、一般的に関節可動範囲(range of motion: ROM)や座位体前屈などで評価されています。ストレッチングを行うと、筋の伸張反射の感受性が低下し、筋や靱帯の弾性要素が組織学的変化を起こすため、柔軟性が増します。また、ストレッチングは2~3メッツの強度がありますので筋温や体温を高める効果があります。これらが柔軟性の向上やウォーミングアップ効果と関連しているのです。

また、これらの効果に加えて、リラクゼーションの効果も明らかとなっています。30分程度にわたり全身の筋を順番に伸ばしていくようなストレッチングの前後で、脳波や自律神経活動を調べてみると、前頭葉でのアルファ(α)波の増加、心拍変動の増加、心拍数の低下がみられます。すなわち、ストレッチングにより、自律神経のバランスが副交感神経活動優位へと変化するのです[3]

「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」[4]では、特に高齢者において、多要素な運動により転倒・骨折の減少や身体機能の維持・向上が期待できることから[5][6]、筋力・バランス・柔軟性などを含む多要素な運動を実施することが推奨されています。また高齢者に限らず、習慣的なヨガの実施が血圧を低下させること[7]、座位体前屈で評価した柔軟性が高い人は動脈硬化度が低いこと[8]などが報告されています。これらはストレッチングのリラクゼーション効果が関与しているのかもしれません。

走ったり筋トレしたりはつらくて苦手だけど、ストレッチングなら家で楽しくできるからやってみたいという人も多いのではないでしょうか? そのような方は、まずストレッチングだけでも始めてみてください。始めてみることで、いろいろな体の変化に気がつくことと思います。

(最終更新日:2026年7月15日)

宮地 元彦

宮地 元彦 みやち もとひこ

早稲田大学スポーツ科学学術院 教授

鹿屋体育大学スポーツ体育課程卒業、同大大学大学院体育学研究科修了。その後、川崎医療福祉大学助教授、米国コロラド大学客員研究員を経て、2003年より独立行政法人国立健康・栄養研究所(現:国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所)に勤務。2021年より現職。第24期・25期日本学術会議会員、厚生労働省の健康づくりのための身体活動基準・指針の改訂に関する検討会委員、スポーツ庁運動・スポーツガイドライン策定検討会委員などを務める。

参考文献

  1. Winters MV, Blake CG, Trost JS, et al.
    Passive versus active stretching of hip flexor muscles in subjects with limited hip extension: a randomized clinical trial.
    Phys Ther 2004; 84: 800-7.
  2. Fradkin AJ, Sherman CA, Finch CF.
    Improving golf performance with a warm up conditioning programme.
    Br J Sports Med 2004; 38: 762-5.
  3. 斉藤剛, 保野孝弘, 宮地元彦.
    特集「ストレッチングの生理学」大脳皮質・自律神経系活動および全身循環への影響.
    運動・物理療法 2001; 12: 2-9.
  4. 厚生労働省.
    健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023.
    2023.
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/undou/index.html
  5. Physical Activity Guidelines Advisory Committee.
    2018 Physical Activity Guidelines Advisory Committee Scientific Report.
    Washington: US Department of Health and Human Services. 2018.
  6. World Health Organization.
    Guidelines on physical activity and sedentary behaviour. 2020.
  7. Patel CH.
    Yoga and bio-feedback in the management of hypertension.
    Lancet 1973; 2: 1053-5.
  8. Yamamoto K, Kawano H, Gando Y, Iemitsu M, Murakami H, Sanada K, Tanimoto M, Ohmori Y, Higuchi M, Tabata I, Miyachi M.
    Poor trunk flexibility is associated with arterial stiffening.
    Am J Physiol Heart Circ Physiol. 2009 Oct;297(4):H1314-8. doi: 10.1152/ajpheart.00061.2009. Epub 2009 Aug 7. PMID: 19666849.