災害時には、物流の途絶やライフラインの停止などにより、普段どおりの食事がとれなくなり、エネルギー・栄養素の摂取不足の影響による栄養不良や体力低下が懸念されます。災害時にも適切な栄養・食生活を送るためには、食べ慣れた食品や使い慣れた物資を普段から多めに買い置きし、使ったら買い足す「ローリングストック」がおすすめです。
近年、日本では多数の自然災害が発生し、災害発生時の栄養・食生活の問題が顕在化しています。具体的には①物流の停止、②ライフラインの停止、③家屋の被害などにより、普段どおりの食事の準備が困難になる場合が多い、といったことです。物流が停止すると、スーパーマーケットやコンビニなどからの食品の入手が一定期間途絶えることになります。また、電気・ガス・水道などのライフラインが停止すると、調理することが難しくます。これらにより、温かく栄養バランスのとれた食事をとることも難しくなります。家屋の被害が少なければ在宅避難が可能ですが、家屋の被害が大きかった場合などは避難所で過ごすことが必要になる場合もあります。避難所の生活では、避難者全員に行き渡るに充分な食品が備蓄されていない場合もあります。食事が支援される場合でも、食品の種類や調理方法が限られることにより、たんぱく質やビタミン・ミネラル、食物繊維が不足しがちになります[1][2]。
災害時にも健康的な栄養・食生活を送るためには、普段から利用している食品や物資を多めに買い置きしておくことが重要です。最低3日分、できれば1週間分を家族の人数分買い置きすることが推奨されています。さらに、乳幼児や高齢者、慢性疾患のある方など、食事に特別な配慮が必要な場合は、2週間分の備えがあると安心です。
ストックする食品を選ぶ際は、普段の食事と同様に主食、主菜、副菜を基本とし、栄養バランスを考え、各家庭の食生活に合った、使い慣れた食品を選ぶことが大切です。特に災害直後の食事は炭水化物に偏りがちです。栄養バランスが考慮されてない食事が続くと、体調不良になることがあります。例えば、野菜不足などから、ビタミンやミネラル、食物繊維などの栄養素が十分にとれず、便秘や口内炎などが生じ得ることも報告されています。また、たんぱく質も不足しやすい栄養素です。たんぱく質の多い食品として、魚介類や肉類の缶詰(焼き鳥缶など)は、長期保存が可能で普段から手軽に入手できるので、ストックする食品としておすすめです。そのほか、じゃがいも、玉ねぎ、にんじんなどの日持ちのする野菜や、ひじき、昆布、切り干し大根などの乾物もおすすめです。ストックする食品は、好みの味の缶詰やレトルト食品、常温保存の可能な食品を中心にそろえるとよいでしょう。
さらに調理するための熱源も確保しましょう。ライフラインの停止に備えて、カセットコンロやカセットボンベ、お湯を沸かすための鍋ややかんを備えておくと便利です。災害時にお湯を沸かせるようになることで、調理の幅が広がり、普段の食事に近い栄養・食生活を送ることができます。熱源のほかに、普段家庭で使っている備品(食品用ポリ袋、ラップ、アルミホイル、クッキングシート、キッチンペーパー、除菌スプレーなど)も買い置きしておくと便利です。食材を入れたポリ袋を鍋で湯せんし加熱する「ポリ袋調理」[3]は、ライフラインが停止した状況でも好みの味付けや栄養バランスのとれた食事づくりに役立つほか、炊飯が出来るなど調理の幅が広がります。
災害時にライフラインの停止等が起こることを想定し、実際に1食分を作って食べる「実食訓練」[4]を実施することは、家庭で備えている食料や物資が、災害時に本当に役立つものであるのかどうかを確認し、ストックしている内容を見直すよい機会となります。
「ローリングストック」によって普段より多く買い置きした食品(備える)は、賞味期限の古いものから消費し(食べる)、なくなる前に追加し(買い足す)、消費した分を買い置きする(備える)を循環するものであり、「実食訓練」は「ローリングストック」のサイクルを効果的に進めるのに役立ちます。
災害時にも、適切な栄養・食生活を送るためには、普段から栄養バランスのとれた食事を心がけるとともに、災害時にもそれを実践できるよう、ローリングストックや実践訓練を日頃から行っておくことが大切です。
(最終更新日:2025年12月15日)