むし歯

むし歯の特徴・原因・進行

むし歯は世界で最も多い疾患として知られており[1]、未治療のむし歯は日本でも多くの人に存在します。さらに近年は高齢者において、むし歯は増加しています[2]。むし歯は細菌が糖質をもとに作り出す酸が歯を溶かすことで生じます。唾液は酸を中性に近づけたり、溶けかけた歯を修復する役割を持ちます。多くのむし歯は歯の間や奥歯の溝から発生し、特に溝の細菌は歯磨きでは取り除けません。そのため歯磨きをしていればむし歯が防げるという常識は現在では正しくないことが分かっています。さらに生物医学的原因だけでなく、社会環境・生活環境の重要性が認識されつつあります。

ライフステージ別にみたむし歯の特徴

「むし歯は減った」といわれますが、実は他の病気に比べると極めて多い疾患です。令和6年学校保健統計調査において近視に次いで、むし歯は多く[1]、永久歯に治療が必要なむし歯を有する人は28%(令和6年歯科疾患実態調査)[2]と極めて多い状況です。40歳以上の年齢において約4割は、むし歯が原因で抜歯の経験があります。高齢者でも、むし歯を有する人が増加しています[3]。むし歯の多くは、歯ブラシの届きにくい奥歯の溝や歯と歯の間から発生します。大人では、歯の詰め物の下で再発したむし歯や歯の根面のむし歯も多くなります。初期のむし歯はフッ化物の利用に加えて、適切なプラークコントロール等により回復することがあります。しかし、進行すると歯を削ったり、歯の神経(歯髄)を取り去るような大きな治療が必要になります。

むし歯の治療の流れ

むし歯が歯の表層に限られる場合は、削らず再石灰化を期待します。むし歯が大きくなると歯を削り、詰め物やかぶせものをつける治療を行います。むし歯がさらに進行して歯髄(しずい)に達すると、歯髄を除去(抜髄[ばつずい])する必要があります。その場合の多くは土台をたててかぶせ物をする治療が必要になります。

むし歯の予防法(総論)

むし歯を作る要因は、歯の質・細菌(むし歯原因菌)・食物(砂糖)の3つにまとめることができます。それぞれの要因に対応する形でむし歯予防法は、フッ化物応用とシーラント・歯みがきの励行・糖分を含む食品の摂取頻度の制限にまとめることができます。これらの予防法が、家庭で・地域で・保健サービスの現場で、バランスよく組み合わされて行われることが必要です。

フッ化物利用(概論)

フッ化物利用は、歯質のむし歯抵抗性(耐酸性の獲得・結晶性の向上・再石灰化の促進)を高めてむし歯を予防する方法です。全身応用(経口的に摂取されたフッ化物を歯の形成期にエナメル質に作用させる)と局所応用(フッ化物を直接歯面に作用させる)があります。有効性・安全性に関する証拠が確認されています。

フッ化物配合歯磨剤

フッ化物(モノフルオロリン酸ナトリウム(MFP)・フッ化ナトリウム・フッ化第一スズ)を含む歯磨剤です。幼児から高齢者まで生涯を通じて家庭で利用できる身近なフッ化物応用で、世界で最も利用人口が多い方法です。

フッ化物歯面塗布

比較的高濃度のフッ化物溶液やゲル(ジェル)を歯科医師・歯科衛生士が歯面に塗布する方法です。乳歯むし歯の予防として1歳児から、また成人では根面むし歯の予防として実施されています。矯正治療中の患者さんや唾液流量の低下している人など、むし歯になるリスクの高い人に対して他のフッ化物応用法に加えて実施されています。

フッ化物洗口

一定濃度のフッ化ナトリウム溶液(5~10ml)を用いて、1分間ブクブクうがいを行う方法で、永久歯のむし歯予防手段として有効です。第一大臼歯の萌出時期(就学前)にあわせて開始し中学生まで続けます。保育園・幼稚園・小中学校で集団実施されていますが、個人的に家庭で行う方法もあります。

水道水フロリデーション

水道水フロリデーションとは、むし歯を予防するために、飲料水中のフッ化物濃度をむし歯の発生を大きく抑制する適正量(約1ppm)まで調整するという方法です。むし歯有病状況を半分程度にするという効果があり、歯科受診やフッ化物配合歯磨剤の利用が難しい人等にも、自然に健康になれる環境を実現できる可能性がある方法です。もともとフッ化物は自然の状態で飲料水に微量に含まれており、その濃度によってはむし歯予防効果があることが100年ほど前に発見されました。80年以上の実施の歴史と研究から、安全性と効果について繰り返し専門機関が保証しています。緑茶や紅茶にもフッ化物が含まれますが、その濃度は水道水フロリデーションと同じくらいであり、身近な食品に近い濃度のフッ化物でむし歯を予防する方法として知られています。

シーラント(予防法)

シーラントは、奥歯の溝を物理的に封鎖したり、シーラント材の中に含まれるフッ化物により再石灰化作用を促進したりするむし歯予防法です。4年以上で約60%のむし歯予防効果が認められ、特にフッ化物応用との併用によってむし歯予防効果はさらに増加します。むし歯発症リスクの高い歯に行うと特に有効です。

甘味(砂糖)の適正摂取方法

砂糖はむし歯のリスク・ファクターのひとつであり、摂取方法によってむし歯の発症に影響を与えます。むし歯予防には、甘味(砂糖)摂取の総量を減らすこと、およびその摂取回数を減らすことが効果的です。ただし、砂糖摂取を制限するだけでは、むし歯予防対策として不十分なため、フッ化物配合歯磨剤の利用などと併せて取り組むことが大切です。また、砂糖の過剰摂取は肥満にもつながることから、生活習慣病予防対策の一環として取り組むことも効果的です。

う蝕の原因とならない代用甘味料の利用法

スクロース(砂糖)などの発酵性糖質に替わってう蝕の原因にならない代用甘味料を上手に利用することが、う蝕予防にとって重要です。いろいろな代用甘味料が開発されており、内閣府消費者庁が許可している特定保健用食品(トクホ)や国際トゥースフレンドリー協会認定食品に利用されています。う蝕予防のため、とくに食間にはこれらの食品を活用し、メリハリのある食習慣をつけることが肝要です。

歯みがきによるむし歯予防効果(予防法)

歯みがきは、歯面からプラークを機械的に除去することを目的とした予防法です。これにはセルフケアとプロフェッショナルケアがあります。セルフケアによってプラークを毎日完全に除去することは現実には不可能と考えられます。むし歯予防を成功させるには、セルフケアとともに他のむし歯予防法を組み合わせることが必要です。



開示すべきCOIはありません。