松果体(しょうかたい)から分泌されるホルモン。魚類や両生類に始まり、鳥類、齧歯(げっし)類、ヒトを含めた霊長類に至るまで多くの動物で産生され、繁殖や渡り鳥の飛来などの季節性リズムや、日々の睡眠や体温、ホルモン分泌などの概日リズム(サーカディアンリズム)の調節に関わっている。
長時間労働や夜型生活による短時間睡眠(睡眠不足)、交替勤務(シフトワーク)による不規則な睡眠リズム、不眠症や閉塞性睡眠時無呼吸などの睡眠障害は生活習慣病の罹患リスクを高め、かつ症状を悪化させることが分かっています。本稿では、睡眠不足や交替勤務などの睡眠習慣の問題、睡眠障害については閉塞性睡眠時無呼吸と不眠症の問題を取り上げ、それぞれ生活習慣病との関係について解説します。
小児の睡眠不足や睡眠障害が持続すると、肥満や生活習慣病(糖尿病・高血圧)、うつ病などの発症率を高めたり症状を増悪させたりする危険性があります。適切に対処していくには「早起き・早寝」という基本的な生活習慣から見直すことが必要です。
概日リズムとは、睡眠や体温、血圧、心拍、多くのホルモン分泌、免疫機能、代謝など、私たちの大部分の生体機能を司る約24時間周期のリズムのことです。しかし、概日リズムを生み出す体内時計の周期があまりにも長かったり、何らかの原因で体内時計の機能が障害されたり、光による時刻調整がうまくできなったりすると、睡眠リズムが大きく乱れてしまいます。このような、睡眠リズムの異常が生じるタイプの睡眠障害が「概日リズム睡眠・覚醒障害」です。
女性ホルモンは日中の眠気や睡眠に影響を及ぼすため、「月経(生理)」「妊娠・出産」「閉経(更年期)」などの女性ホルモンが大きく変動するライフイベントでさまざまな睡眠問題が生じることがあります。例えば、生理前の強い眠気、妊娠中の眠気や不眠、更年期の不眠などがあります。女性のライフステージに沿って解説します。
令和元年に、全国から無作為に抽出した20歳以上の成人約5,700人を対象に厚生労働省が実施した国民健康・栄養調査によれば、「この1ヵ月間に、週3回以上、日中に眠気を感じた」人は、34.8%もいました。20代が43.6%ともっとも多く、年齢が高くなるにつれて眠気を感じる人は減少しましたが、70歳以上の年代でも31.1%が眠気を感じていました。眠気の原因は睡眠不足だけではありません。睡眠の質が低下する睡眠障害、持病のために服用している薬剤の副作用、うつ病などの精神疾患などでも眠気が出現することがあります。生活スタイルを見直すとともに、眠気が強い場合には診察や検査を受けて必要な治療を受けることが大切です。
不眠症とは、入眠障害(寝つきが悪い)・中途覚醒(眠りが浅く途中で何度も目が覚める)・早朝覚醒(早朝に目覚めて二度寝ができない)などの睡眠問題があり、そのために日中に倦怠感・意欲低下・集中力低下・食欲低下などの不調が出現する病気です。不眠は誰でも経験しますが、自然に改善して再び眠れるようになることが大部分です。ただし、いったん慢性不眠症に陥ると適切な治療を受けないと回復しにくいといわれています。不眠の原因はストレス・こころやからだの病気・薬の副作用など様々で、原因に応じた対処が必要です。不眠が続くと不眠恐怖が生じ、緊張や睡眠状態へのこだわりのために、なおさら不眠が悪化するという悪循環に陥ります。家庭での不眠対処で効果が出ないときは専門医に相談しましょう。睡眠薬に対する過度の心配はいりません。現在使われている睡眠薬は適切に使用すれば安全です。
生活習慣は睡眠と深く関連しています。ここでは、快眠に役立つ生活習慣の代表である「運動」、「入浴」、「光浴(日光や人工照明)」を取り上げます。これらの生活習慣は、適度な強さで、定期的に、適切な時刻(タイミング)で行うことが大事です。
私たちは毎日ほぼ同じ時刻に眠り、同じ時刻に目が覚めます。このような規則正しい睡眠リズムは、日中の疲労蓄積による「睡眠欲求」と体内時計に指示された「覚醒力」のバランスで形作られます。健やかな睡眠を維持するために、夜間にも自律神経やホルモンなど様々な生体機能が総動員されます。睡眠にはサイクルがあります。夢を見る「レム睡眠」と大脳を休める「ノンレム睡眠」が約90分周期で変動し、朝の覚醒に向けて徐々に始動準備を整えます。
健やかな睡眠があってこそ十分な休養をとることができます。
現代生活はシフトワークや長時間通勤・受験勉強・インターネットやゲームをしての夜型生活など、睡眠不足や睡眠障害の危険で一杯です。睡眠不足による産業事故、慢性不眠によるうつ病や生活習慣病の悪化など、睡眠問題を放置すると日中の心身の調子にも支障をもたらします。
私たちは人生の3分の1を眠って過ごします。最も身近な生活習慣である睡眠にもっと目を向けてみませんか。
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