食生活や生活習慣が多様化した現在では、過食や運動不足による「肥満」や「メタボリックシンドローム」がある一方で、不健康なダイエットなどによる「やせ」も社会問題となっています。楽しく健康でいきいきと過ごすためには、適切な体重の認識と体重管理が大切です。
日本肥満学会[1]によると、体格指数(BMI=体重[㎏]/身長[m]2)が25以上の場合が「肥満」に分類されます。BMIが35以上になると、「高度肥満」に分類されます。肥満は太っている状態を示すものであり、すぐに健康状態に影響をもたらすものではありませんが、肥満による合併症が1つ以上ある場合、または内臓脂肪肥満(男性:腹囲85㎝以上、女性:腹囲90㎝以上)がある場合は「肥満症」と診断されます。令和5年国民健康・栄養調査によると、肥満者(BMI25以上)の割合は、男性31.5%、女性21.1%でした。女性は過去10年間有意な増減がみられないのに対して、男性では平成25年から令和元年の間に有意な増加がみられています[2]。健康日本21(第三次)では、適正体重を維持している者の増加を目標にかかげており、男性では肥満の改善が必要です。
メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪型肥満を必須項目として、高血糖・脂質異常・血圧高値の3項目のうち2項目以上を満たす場合と定義され、それぞれのリスク因子が重複することで脳卒中や心臓病などの発症リスクが高くなるため、内臓脂肪を減らすことで、このリスクが低くなるという考え方を基本としています。なお、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の疾患概念と診断基準は日本内科学会等内科系の8つの学会で示されています[3]。診断基準は、「ウエスト周囲径男性85cm以上女性90cm以上(内臓脂肪面積:男女とも100cm2以上相当)」で「1.血圧の収縮期130mmHg以上かつ/または拡張期85mmHg」「2.空腹時血糖値110mg/dl以上」「3.中性脂肪(トリグリセライド)値150mg/dl以上かつ/またはHDLコレステロール40mg/dl未満」の1.から3.のうち2つ以上該当する場合としています。
40歳~74歳の男性で、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)が強く疑われる者は約3割、その予備群と考えられる者もあわせると、2人に1人が該当すると、令和5年国民健康・栄養調査により報告されています[2]。メタボリックシンドロームを予防するには、食生活をはじめとする生活習慣の改善が大切です。まずは、自分の食生活を振り返り、気になる点を見つけることから始めてみましょう。そして、無理なく続けられる改善策を取り入れ、健康的な食生活を習慣にしていくことが重要です。
適切なダイエットや体重コントロールは、まず自分にとってそれが本当に必要かどうか判断することから始めましょう。体重管理の目標とするBMI(kg/m2)は、年齢によって異なりますが、食事摂取基準(2025年版)での目標とするBMIの範囲は、18~49歳は18.5~24.9、50~64歳は20.0~24.9、65歳以上は21.5~24.9と設定されています[4]。BMIが上記の範囲内であっても、腹囲が基準を超えていたり、血圧や血糖が高めであったり、体力や気力が以前より減ったと感じる方は、食事の内容や生活の質を見直しましょう。
「特に、何も気になるところはない」という人でも、食事記録をつけてみるとよいでしょう。「何から始めたらよいか、わからない」という人にも、食事記録はお勧めです。いつ、どんなときに、どのようなものを食べて、どのように感じたかがわかり、課題や改善点を可視化できます。スマートフォンを持っている人は、さまざまなヘルスケアアプリがあるので、ぜひ自分に合ったものを見つけて使ってみてください。
高血糖、脂質異常、血圧高値の改善や重症化予防のためには、減量や肥満の是正が推奨されています[4]。3~4%の緩やかな減量でも、検査値の異常は改善するといわれています。まずは、小さな一歩を踏み出し、手ごたえを感じながら継続していきましょう。
減量に取り組む際は、特定の食品を抜いたり極端に食事量を減らしたりするのではなく、主食・主菜・副菜をそろえたバランスのよい食事を基本に、食材の選択や調理法の工夫、菓子・アルコールなどの嗜好品の摂取を見直してみましょう。また、「減らす」「控える」といった漠然とした目標ではなく、「ご飯は1膳まで」「間食は1日1回まで」と具体的に決めると実践しやすくなります。自分に合った方法で、毎日の食事をより健康的なものにしていきましょう。
さらに、持続的に取り組むためには、できない日があっても落ち込まず、複数日で調整するなど計画に柔軟性を持たせることが大切です。無理なく続けることを意識しながら、健康的な生活習慣を身につけていきましょう。
(最終更新日:2025年6月16日)