野菜は、ビタミンやミネラル、食物繊維を豊富に含み、私たちの健康の保持・増進に欠かせない食品です。野菜を十分に摂取することで、心血管疾患や脳卒中、糖尿病などの生活習慣病(非感染性疾患:NCDs)の予防が期待されます。しかし、2023年の国民健康・栄養調査によると、日本人の野菜摂取量の平均は256gと、健康日本21(第三次)が掲げる目標の350gに届いていません。毎日の食事で意識的に野菜を取り入れ、健康的な食習慣を身につけましょう。
野菜には、私たちの身体に必要な栄養素が豊富に含まれています。例えば、にんじんやほうれん草に多く含まれるβカロテンは、体内でビタミンAに変換され、皮膚や粘膜の健康を保つ働きがあるといわれています。また、ピーマンやブロッコリーに豊富なビタミンCは、抗酸化作用を持ち、免疫機能の維持にも役立つといわれています[2]。さらに、ビタミンB群はエネルギー代謝に関与し、ごはんなどに含まれる炭水化物を効率よくエネルギーに変換するのを助けます。
ほうれん草やアボカド、かぼちゃに多く含まれるカリウムは、体内の余分なナトリウムを排出し、高血圧の予防に役立つことが期待できます[3]。また、小松菜や春菊などにはカルシウムも豊富で、丈夫な骨や歯を作るのに欠かせません。特に、小松菜やチンゲンサイは、乳製品をあまり摂らない人にとって良いカルシウム源となります。
そして、ごぼうやオクラ、キャベツに多い食物繊維は、整腸作用があり、便秘予防や[4]血糖値の安定に役立つことが期待できます[5]。
野菜をしっかり摂ることは、さまざまな病気の予防に役立つことが科学的に示されています。国内外の研究によると、野菜を多く摂取することで、心血管疾患や脳卒中などの循環器疾患の発症や死亡リスクが低下することが明らかにされています[6][7]。また、糖尿病予防の観点からも、緑黄色野菜や根菜類の摂取が2型糖尿病の発症リスクを抑えることも報告されています[8]。
さらに、日本人の野菜摂取量を1日あたり70g増やすことで、循環器疾患の疾病負荷が軽減されることがわかっています[9]。野菜の摂取量が多い人は総死亡リスクが低下することも明らかになっており[10]、世界的に見ても、野菜の摂取不足は、死亡リスクを高める重要な食事関連のリスク因子の一つとされています[11]。そのため、野菜を十分に摂取することは、健康寿命の延伸にもつながることが期待されます。
厚生労働省が実施した2023年の国民健康・栄養調査によると、日本人の20歳以上の1日あたりの野菜摂取量の平均は256gで、男性は約262g、女性は約251gと報告されており、近年の野菜摂取量は減少傾向にあります[12]。健康日本21(第三次)では、生活習慣病の予防や健康保持・増進を目的として、「野菜摂取量の増加」を目標の一つに掲げ、その目標値を1日あたり350gとしています[13]。研究によると、野菜を1日350g以上摂取している人は、多くの栄養素の基準値を満たし、より健康的な食生活を送っていることが示されています[14]。
一般的な野菜料理1皿には、約70gの野菜が含まれています。現在の日本人の野菜摂取量をこの目標値と比較すると、例えば「ほうれん草のお浸し」では1皿~2皿分の野菜が不足していることになります。そのため、1回の食事で野菜を主材料とした料理を1皿以上取り入れ、1日5皿~6皿分を目安に摂取することを心がけましょう。
野菜は低脂質、低エネルギーでありながら食品の「かさ」が多いため、満腹感を得やすい特徴があります。一方で、かさが多いと食べにくいと感じることもあるかもしれません。例えば、キャベツなどの葉物野菜は、電子レンジで加熱したり、ゆでたりすることで、かさが減り、食べやすくなります【図1】。サラダなどの生の野菜と、加熱した野菜をバランスよく摂取することが理想的です。また、濃い色の緑黄色野菜、薄い色の淡色野菜、根菜類といったさまざまな種類の野菜を組み合わせることも大切です。
また、野菜を摂る際や調理をする際には、食塩の摂取量にも注意しましょう。野菜を1日350g以上摂取している人は、より健康的な食生活を送っている傾向がある一方で、ナトリウム(食塩)の摂取量が多いことも報告されています[14]。食塩を多く含む調味料の使いすぎに注意し、ドレッシングの代わりにこしょうなどの香辛料やレモンなどの柑橘類を活用したり、減塩の調味料を選んだりするなど、工夫してみましょう。
野菜にはビタミンやミネラル、食物繊維が豊富に含まれており、生活習慣病の予防に役立つことが期待できます。毎日の食事で1日350gを目標に、野菜を積極的に取り入れ、健康の保持・増進につなげ、健康寿命を延ばしましょう。
(最終更新日:2025年5月1日)